岡山市北区。校門の横で配られる配布プリントを受け取り、俺は肩にかけたサコッシュを直した。今日は授業参観とPTA役員の顔合わせが続く長い一日。グラウンドでは、次の季節にある運動会のリハの声が遠くから聞こえる。
俺は海斗、27歳。妻と小学一年の息子がいる、どこにでもいる父親だ。
教室の後ろで立っていると、隣に並んだ保護者が、そっと声を落とした。
「この教室、午後になると暑いですね」
「ですね。扇風機、もう一台ほしいくらい」
振り向くと、柔らかい髪を肩で束ねた女性。胸元の目立つ服ではないのに、立ち姿がなぜか目を引く。
「三浦です。美咲っていいます。四組の蒼汰の母です」
「海斗です。一組の優斗の父です。よろしくお願いします」
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連絡網の確認、座席替えの相談。PTAの分担で机を動かしているうちに、自然と雑談が増えた。
「美咲さん、岡山は長いんですか」
「結婚してからずっと。実家は倉敷。たまに美観地区のあたりを散歩すると落ち着きます」
「わかります。俺は時間があると後楽園をぐるっと。子どもは退屈そうですけど」
「うちも同じ。蒼汰は『城より公園!』って」
笑うと、目尻に小さな皺が寄った。人前の笑いなのに、妙に近い温度が残る。
参観が終わって体育館へ移動。PTAの役割決めは想像通りの静けさだった。誰も手を挙げない空気を、校長のマイクがやんわり叩く。
「では、広報委員…」
俺は勢いで手を上げた。沈黙がしん、と軽くなったその脇で、美咲さんも「じゃあ、行事係を」と続ける。
あとで係の引き継ぎをしていると、彼女が肩をすくめた。
「勢いで来ちゃいましたね」
「ええ、まあ。せっかくなら学校のこと、近くで見ようかと」
「じゃあ、今度の学校公開日、動線の下見、一緒に回りませんか」
「ぜひ」
その学校公開の前日、俺たちは下見という名目で校内を歩いた。掲示物の位置、来校者の受付、名札。作業はすぐ終わり、時間が余る。
「近くでお茶、いいですか」
「行きましょう」
商店街の小さなカフェ。窓越しに岡山城の天守が遠くに覗く。
俺たちは、当たり障りのない会話を積み重ねた。——最初は。
やがて、こぼれる言葉の温度が変わる。
「旦那さんは、参観来られない?」
「出張だらけで。来ても、写真だけ撮ってすぐ電話。…別に、いいんですけどね」
マグの淵に指を置いたまま、美咲さんは笑ってみせた。
「海斗さんは?」
「妻はまじめです。家のことも仕事も。…だから俺は、ちゃんとしている“ふり”が上手になりました」
笑い合う音の奥で、同じ種の空洞が鳴った気がした。
言葉にしない方が安全なことが、この世にはある。話題を変えるふりで、近づく。
「PTAの資料、まとめ直してLINEで送りましょうか」
「助かります。じゃあ、私も行事のチェックリスト作って送ります」
その晩、保護者グループLINEの裏で、俺と彼女は個別に連絡を始めた。
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「明日、受付に貼る矢印、色、どうします?」
「目立つ色で。赤、青、黄色、…あなたの好きな色で」
ふと、唐突な一文が返ってきた。
「“あなた”って呼んでいいですか」
「…好きにどうぞ」
既読がすぐに二つ付いた。
学校公開は滞りなく終わった。行事係の美咲さんは、目立たずに、でも全体をよく見て動いていた。広報の俺は、その背中を何度も写真に収めた。
昼過ぎ、役員同士のささやかな打ち上げ。校門から出たところで、彼女が言う。
「少し歩きません?」
「いいですよ」
城下筋を抜け、旭川の風に当たる。
「行事が終わると、急に静かになりますね」
「そうですね」
「…静かになると、余計なことを考えます」
「どんな」
「家で“ちゃんとした妻と母”の顔に戻る練習とか」
「えらい」
「えらくなんかない。練習が必要な時点で、もうボロが出てる」
立ち止まった彼女が、笑って、目を伏せた。
風の匂いが変わる。距離感も、変わる。
俺は、余計なことを言いそうになる口を閉じ、現実的な提案をした。
「次の運動会、係の準備でまた集まりますよね。前にPTA本部室の鍵を借りたので、中で段取り表、詰めませんか」
「…わかった。そうしましょう」
帰宅すると、リビングはランドセルと絵の具セットで散らかっていた。妻は洗い物をしながら、今日の参観の話を聞きたがった。
俺は「良かったよ」とだけ答えた。
心のどこかで、薄い紙が一枚、静かに剥がれ落ちる音がした。
その夜、個別LINEに短いメッセージが来た。
《鍵、借りられました。土曜の午前、空いてます》
《空いてます》
——ほんの数文字で、人はどこまで踏み込めるのか。
画面の光が、暗い部屋でやけに白かった。
俺は知っている。
こういう始まりは、いつも滑らかだ。
坂はゆるいけれど、確実に下へ続いている。
そして、その坂の先に何があるかも。
扉が閉まった瞬間、空気が変わった。
彼女は机に資料を置きながら、ふっと息を吐く。
「本当に、こういう時間のために“準備”なんて言い訳するんだね、私たち」
「言い訳があるから来れるんです」
「…そうだね」
窓の外では、グラウンドに白線が引かれている。
なのに俺たちは机を寄せて、その陰で肩を触れ合わせていた。
最初は軽い接触。けれど指先が絡んだ瞬間、美咲の呼吸が変わる。
「……だめだって思ってるのに」
「思ってても、こうしてる」
背中に腕を回すと、彼女は抵抗しなかった。制服姿の子どもたちがいない静かな教室で、大人だけの音が混じり始める。
唇が重なり、舌が触れ合ったとき、彼女は小さく声を漏らした。
「……旦那とは、もう何年もしてない」
その一言で、背徳の重さが一気に現実になった。
ブラウスのボタンを外すと、布に押さえられていたものが形を変えてあふれた。
母親である顔からは想像できないほど、柔らかくて重たい。
「見ないでって言いたいけど、…見てほしい」
「じゃあ、見ます」
机の端に腰を掛けた彼女を抱き寄せる。首筋を舐めるように唇を這わせると、美咲はシーツではなく教卓の縁を握った。
「声、出ちゃう……ここ、学校なのに」
「出ても大丈夫。誰もいない」
吐息と小さな声が重なり、窓ガラスにかすかに震えが映る。
肌が擦れ合うたびに、彼女は母親ではなく「女」に戻っていった。
やがて机の上のプリントが散らばり、赤ペンが床に落ちた。
その瞬間、美咲は身体を反らせて声を押し殺そうとした。
「……あぁ……」
言葉にならない音が喉から漏れ、髪が肩に乱れ落ちる。
俺はその姿をただ見つめ、心の奥で黒く呟いた。
――旦那がこの顔を最後に見たのは、いつなんだろうな。
終わったあと、本部室は汗と紙の匂いが混じっていた。
美咲は乱れたブラウスを直しながら、小さく笑った。
「最悪だね。よりによって学校でなんて」
「でも、忘れられなくなりますよ」
「……ほんと、そうだね」
校庭では、PTAの別のグループがテントを組み立てていた。俺と美咲は何もなかった顔で合流する。
「運動会、本番も忙しくなりそうですね」
「そうですね」
周りから見れば、ただの役員同士の会話。
けれど俺たちだけは知っている。教室の鍵が閉まったあの瞬間、母親と父親の仮面が外れ、禁じられた時間に沈んでいったことを。
岡山の空は昼間から茜色が混じり始めていた。
今日は互いに子どもを預けた。俺は義母に「少し仕事がある」と頼み、美咲は旦那に「買い物に行くから見てて」と言ったらしい。
――長く一緒にいたいからこその算段だ。背徳感よりも、ただの欲望のため。
ホテルの部屋に入るなり、美咲が笑った。
「ねぇ、今日は時間あるんだよね?」
「ある。夕方まで大丈夫」
「よかった…やっとゆっくりできる」
カバンをソファに放り投げ、靴を脱いでベッドに倒れ込む。その自然な仕草に、ここが「日常の一部」になっているのを感じた。
しばらく抱き合って、汗がじっとり滲んだ頃。
「はぁ…こんな昼間から、ほんとバカだよね私たち」
「バカでもいいでしょ。気持ちいいんだから」
「うるさい…」
そう言いながら笑って顔を背ける。けれど腰は俺の方へ寄せてくる。
シーツに沈む胸が、波打つように揺れる。
「また触ってる…」
「やめて欲しい?」
「…やめてって言ったら、やめる?」
「やめない」
「でしょ…」
目を細めて、俺の首に腕を絡める。もう完全に女の顔だった。
行為の合間に水を飲みながら、ぽつりと言う。
「旦那、今日ずっと娘と公園行ってるんだって」
「へぇ」
「いいパパぶってんの。本人は“父親の役目”果たしてるつもりなんだろうね」
「…」
俺は何も言わずに笑っただけだ。こういうときに言葉を添えるよりも、心の中で嗤う方が気持ちいい。――こいつの旦那は、本当に何も分かってない。妻が昼間から他の男に抱き潰されてるってのに。
夕方近く。ベッドに横たわった美咲は、髪を乱したまま肩で息をしていた。
「帰ったら、普通の顔しなきゃ」
「できるの?」
「できるよ。…今までもずっとやってきたんだから」
「器用ですね」
「お互いさま」
そのやりとりは、ただの冗談に聞こえたかもしれない。だが俺には確信に変わっていた。
――美咲は、もう完全に俺のセフレだ。
母親でも、妻でもない。俺が欲しいときに抱くための女。
旦那は「いい父親」を気取って子どもと遊んでる。だが、その裏で妻は俺のベッドで何度も絶頂している。
馬鹿だ。
本当に馬鹿だ。
「家族を守ってる」なんて勘違いしながら、自分の女を他人に差し出しているんだから。
岡山の街を歩く人々は、俺たちのことなんて知らない。
石山公園で娘と手をつなぐ美咲を見ても、誰も気づかない。
でも俺だけは知っている。
――その女は、俺に股を開く。何度も何度も。
俺は黒い笑みを飲み込みながら、美咲の肩を抱いた。
「またすぐ会おう」
「…うん」
俺の中では、すでに答えが出ていた。
彼女は旦那の妻なんかじゃない。俺のセフレ。それ以外の何ものでもなかった。
